強烈な刺激と共に、宗勝は畳に倒れた。しかも、それが後頭部を強打したのだと自覚するのに少々の時間を要するほど強烈だったのだ。しばらくは痛みに目を閉じ、酷い頭痛に身を委ねていたが、胸の下の辺りに誰かが座り、両腕が頭の両側に押し付けられるのを感じゆっくりと目を開いた。最初は視界がチカチカと揺れたが、それも次第に落ち着き、自身に跨がる者の正体を見付けた。 「宗勝!お、俺に抱かれろ!」 それは可哀相になってしまうくらいに顔を赤くした、宗勝の主人隆景の養子、小早川秀包だった。 宗勝の手首を掴む手は震えていた。心なしか声も震えているようで、見ると大きな目は潤んでいる。 「秀包様…御冗談も程々に…っ」 ガチッと音を立てて歯と歯がぶつかった。それが秀包からの口付けだと気づくのにも少々の時間を要した。 何しろ愛して止まない隆景の養子だと言う現実のおかげで始めこそ躊躇ったが、よくよく見てみれば元は兄弟なだけあって顔立ちもよく似ている。確か異母兄弟だった筈だったが、二人とも父親に似たようで少しだけ垂れた目も、小さめの口もそっくりだ。宗勝はまだ隆景が10歳を 過ぎたばかりで小早川家へ養子になった頃を思い出した。 あの頃は身分違いの恋に胸を引き裂かれんばかりの夜を過ごしていた。そんな淡い思い出は次第に汚れた妄想に変わってゆく。 残念ながら秀包の言うように抱かせてやるつもりは毛頭ない。だが逆だったら? 長年の夢が叶う。夢にまで見たあの隆景を抱けるとしたら?宗勝は秀包の腕を振り払うと、頭に手を回し、不器用な口付けに舌を絡めた。 寝間着の袷を力ずくで引きちぎり、その白い肌を露にさせる。もはや形勢は逆転しており、秀包に宗勝がのしかかる体勢になっていた。 「むね…かつ…?」 「秀包様、そういった゛おいた゛は感心しかねますな」 言うなり宗勝は秀包の唇に食らい付いた。 「んっ…むぅ…!」 秀包の舌を吸い上げ、絡め合いながら、右手をそろりと下肢へと忍ばせる。口付けだけで既に勃起していた陰茎に触れると、秀包は目を見開き、全身を震わせた。 「秀包様…よもや経験が全くないということはありますまいな」 それが男に抱かれたのか、女を抱いたことなのかは分からないまま、秀包は宗勝の肩に縋り付いた。 「はっ…宗勝…ッ」 宗勝はちゅっと音を立てて唇を解放すると、ゆっくり身体を下へずらし始めた。 「やっ…ッ」 一度だけ乳首を吹い、あとはしなやかな指先で捏ねくり回す。そしてとうとう赤い唇は秀包の陰茎へ辿り着いた。 「いやだ!」 両肩を押して抵抗する秀包をものともせず、宗勝はその陰茎を口に含んだ。 「宗勝…やめろよぉ…っ」 喉の奥まで吸い上げ、一気に引き抜く。それだけで秀包は快感に喘ぎ、悲鳴を上げた。頭を上下に振り、吐精を促す。 「あ、あぁ、やだぁ!」 宗勝が強く陰茎を吸い、乳首をきゅっと摘み上げた時、秀包は叫び声と共に達した。 「……宗勝…」 「秀包様、早く御召し物を整えなさいませ」 唾液に濡れた腹は宗勝が拭いてやった。吐き出した精液は宗勝が全て飲み下した。 涙で濡れた顔だけは秀包が自らの袖で乱暴に拭った。 「……親父にもシてるのか」 「御冗談を」 宗勝が立ち上がり、秀包に手を差し出した。怖ず怖ずとその手を取ると、宗勝は秀包の小さな身体を引っ張り上げた。 立ち上がった秀包にひざまずき、下穿きに付いた汚れを払うと再び立ち上がり秀包を見下ろす。 「お戯れは程々になさいませ」 「違う!俺は…宗勝が…っ」 秀包の言葉を遮るかのように、宗勝は秀包の顎を捕らえると、その唇を自らの唇で塞いだ。 「失礼します」 一礼し、秀包に背を向ける。 潤んだ小さな声で「ズルイ」と秀包の呟く声を聞きながら、宗勝はその場を後にした。 戻る |