「あ、春兄…おはよ」 「起きたか」 昨晩の激しい情交で、隆景は布団に突っ伏したままだ。元春はとっくに起きて、軽く散歩まで済ませてある。 「ねぇ、お願いがあるんだけど」 「何だ?」 「春兄が一人でシてるトコ見たい」 「な…何…?」 要は簡単。涼しい風に吹かれ、気持ちがよくなった今、隆景の目の前で自慰をしてみろというのだ。 そんなの冗談じゃない、と逃げようとするが、隆景が長い腕で元春の着物の裾を握り締めたまま離してくれそうにない。 「お願い、春兄」 いつになくしおらしい―――隆景の事だから大袈裟な演技なのだろうが―――隆景に布団の上から期待に満ちた瞳を向けられ、元春の自尊心が揺らぐ。 「………………………分かった」 隆景は、両手で顎から頬を包むようにしてから布団に肘を突いた。 元春は折角着込んだ着物の前を全て開けている。褌も心なしか緩められ、その隙間から緊張しているのか陰茎が窮屈そうにしているのが窺えた。 「もうタってる」 「煩い、外でも見てろ」 クスクスと笑う隆景に、顔を赤くした元春は褌を横へずらし陰茎を取り出すと、ゆっくり扱き始めた。 「…っ…隆景…ッ」 「いつも私のこと考えながらシてるの?」 「黙って、ろ!」 隆景の目の前でうっかり名前を呼んでしまったのが災いして、隆景がもそもそと布団から這い出る。そしてすっかり上を向いた陰茎の先端をくわえた。 「隆景!」 「やっぱ見てるだけじゃつまんないし」 それに私がいた方がイけるんじゃない? 皮肉っぽく言われたが、元春はさして苛つかなった。何をおいても相手が隆景だからだと思うが、どうも本人に自覚はないらしい。 「春兄、手が止まってる」 「…っ」 突然先端を尖らせた舌で突かれ、元春が身を竦ませた。 しかし言われるがままに右手で必死に扱く。隆景の頭が邪魔で、上手く動かすことはないが、稀にするときよりも強めに握り締めた。 隆景の口許からじゅるじゅると淫猥な音がする。それが唾液だけではないことくらいは、何度も身体を重ねた元春は知っていた。 そうこうしている間に元春に限界を訴え始め、隆景の口内に放つか、はたまた顔にぶちまけるか、咄嗟に悩んだものの、結局は隆景の口の中に精を放った。 「いつもより遅いね」 最後の一滴まで搾り取ろうとでも言うのか、隆景は精を放った後の陰茎を強く吸う。 「た、隆景!……これで満足か?」 「やっぱり一緒にスる方が好きかな」 「………俺もだ」 もうこんなのは真っ平だ。 口には出さなかったが、隆景のことだから表情で察した事だろう。 元春の災難は、終わることを知らない。 戻る |