いつも生意気なヤツだと思ってた。確かに仲はいい。それにしたってチビのクセにやたら騒がしいし、俺の身長が気に入らないらしくてキャンキャン突っ掛かってきた。まぁそれも含めて仲良くやってたし、二十歳過ぎたイイ大人があんなにちっちぇえのもからかい甲斐があって面白かった。仲間だった。そう、アイツの寝顔を見たあの日までは。 「おい、秀包。いいかげん―…」 傾いた陽射しに目を細めながら秀包の肩を揺さ振る。一緒に昼寝をしようとやって来た秀包に最初は渋ったが、宗茂も心地良い春の陽射しには敵わず、結局は秀包よりも早く寝付いてしまったのだった。 まだ眠い眼を擦りながら、小さい身体をいつもよりも小さく丸めながら眠る秀包の顔を覗き込む。 か、可愛い―――!? すうすうと寝息を立てるその表情は普段の幼さに潜む豪胆さをさらに覆い隠し、少年のような愛らしさを満面に湛えていた。 「ん〜まだ寝足りな――っ!?」 理性が弾け飛ぶのに時間も間も要らなかった。頭で考えるより先に、秀包の肩を掴み仰向けにさせるとその唇に貪り付く。 寝起きのぼんやりした頭を更に蕩けさす激しい口付け。している筈の宗茂さえもその微睡みに酔う。 「はっ…とら、ん」 唾液が音を立てて絡み合った。飲み込む気など更々ないのに溢れた分は秀包の顎や頬を伝い落ち、張り付いた髪や畳を濡らす。漸く頭が覚醒してきたのか、秀包が宗茂の胸を押し返そうともがいた。だが本気で抵抗する気がないのか、それとも未だ力が入らないでいるのか、宗茂はびくともしなかった。身体は小柄とは言え、秀包の力は強い。全く押し返せない筈はないのだが、覚醒した頭でもやはり完全に否定する気もないのだろう。 今の今まで義兄弟以上の気持ちなど持たなかった統虎にしてみれば、秀包が自分を否定しない事は疑問だ。いや、義兄弟だからと枷をかしていただけかもしれない。いつもつんけんしている秀包の、いつもとは違う可愛らしい表情に理性のたがが外れたが、それも自分をごまかすだけの言い訳だったのかもしれないとも思った。 「秀包…」 「虎ぁ」 甘えたような秀包の声。 お前は何を考えている? 「ンっ…ん…」 左手の甲で口を抑え、喉でも声を押し止める秀包の右腕を同じ側の膝に縛り付け開脚させると、躊躇いがちに秀包の股に頭を沈めた。 口付けだけで興奮したのか、褌越しにくわえた秀包の隠茎は勃起しているのがわかる。 「秀包…タってる」 「お、お前がくわえるから…っ」 褌を解きながら見上げると、見ていて可哀相になるくらい顔を真っ赤にさせ、潤んだ眼を泳がせているのが分かった。 「俺も…タってる」 恥ずかしそうに仏頂面で吐き捨てた宗茂が秀包の左手を取り自らの股間へ導く。 「それって……」 「………シたい」 「……………ん…」 長い沈黙の後、秀包は小さく頷いた。 「そんなっ…舐めんな!」 執拗に下腹部から尻に掛けてを舐め回す宗茂に怒鳴り付けるが、甘ったるい響きを孕んだ声は迫力を欠き、横に流れた涙の跡を更に新しくさせるだけだった。 縛られた右足は秀包の恥部をあられもなくさらけ出させ、背を丸め尻を高く掲げる格好。それでも宗茂の愛撫は着実に秀包の理性と自尊心を欠乏させてゆく。 「うっ…」 舌で散々舐め尽くされた肛門は宗茂の太くごつごつした指を簡単に飲み込んでみせた。予想外にすんなり指を受け入れた秀包に若干の不安をおぼえつつ、宗茂はその指を二本に増やした。 「あぁん…や、ぁ」 秀包が背を丸めれば丸めただけ自らの先走りが腹や胸に滴り落ちる。淫猥な糸を裁ち切ると、宗茂は興奮する呼吸を抑えようともせずに口の端を吊り上げた。 「なんだよ、伴天連の仲間のクセに俺にヤられて感じてんじゃん」 「だ、誰だってそんなコトされたら興奮するに決まってんだろ!」 「誰だって?お前他のヤツとケーケンあんの?」 ぴくりと宗茂の動きが止まる。 「ち、ちげーよ」 「ふーん」 突然二本の指がバラバラに、そして乱暴に秀包の体内を掻き回す。 「あ、やっ、痛い!虎!」 「お前もカワイイ顔してシタタカだよな、誰とヤったんだよ?まさか太閤殿下とか?」 「ちがっ、あぅ!」 さっきまでとは違う、まるで別人のような荒々しい愛撫に、秀包の肛門は僅かに血を滲ませる。 「血ぃ出て来た」 一息に指が引き抜かれ、今度は生温くて柔らかい何かが秀包の肛門に這わされた。 「ん…っあ…」 自由の利かない身体で秀包がもがく。必死で首を伸ばしてみると、宗茂がそこに顔を埋めているのが見えた。 舐めてる…! それが分かった瞬間、脳が沸騰しそうな程の羞恥に駆られる。さっきまでとは違う、蕩けたソコを舐められると、身体の芯が疼きヒクヒクと痙攣した。 「あ…虎…っ…やめ…」 「いいぜ、そのかわり『オネダリ』してみろよ」 舐めながら指で肛門を広げる。引き攣った悲鳴を上げながら、秀包が喉笛を晒す。 「虎っ…」 「ほら…秀包、何て言うんだ?」 涙で霞む視界の中で、宗茂は酷く嗜虐的な表情を浮かべていた。不自然な姿勢のまま見下ろされ、胸元には自身の先走りがポタポタと滴り糸を引いている。 何て不様な。なけなしの理性が囁く。だがそんなものは何の役にも立たない。 「と、らぁ…虎の、ちょうだい…」 顔を真っ赤にさせ、涙を零しながら蚊の鳴くような声で囁く。ぐすっと鼻を鳴らし、垂れそうになった鼻水を啜った。 「あぁ…それくらいで勘弁してやるよ」 今日のところはな。 秀包が聞いたのは絶望に値する言葉で、そこにいるのはいつも無邪気に遊んでいる宗茂ではなく、欲に駆られた獣。 宗茂が晒された秀包の秘部に起立した陰茎を宛がうと、ゆっくり押し進める。一番太く張り出した部分が入口を通過するかしないかの所でわざと腰を止め、秀包が悲鳴を上げるのを悠然と眺める。 しかしこうしていると、宗茂の感じる場所を締め付けられることになるので、そう長くは続けられない。 「とらぁ…ッ、たすけ、て…」 秀包の左手が宗茂の着物の端を掴む。最初はぽろりと零れるだけだった涙も、今では両目からボロボロと溢れ出し、畳を濡らしている。 「秀包…スゲー気持ちイイよ…っ」 「ん…っ」 宗茂はその体躯に見合った大きな陰茎を根元まで押し込むと、秀包に口付けた。 そのまま舌を絡め合うと秀包は宗茂をきゅうと締め上げる。それが気持ち良くて、宗茂は夢中で秀包の舌を吸った。 秀包も次第に快感を覚えたのか、左腕だけで宗茂の首にしがみつく。 「ふあ…んぅ…虎」 今までにない濃厚な口付けに酔いしれ、秀包は宗茂を求めた。そして腰を上下に激しく動かしながら宗茂は限界が近いことを秀包の耳元で囁く。 「秀包…オレ、ヤバい…っ」 「虎…ァ…おれも…!」 返ってきた意外な言葉に、宗茂は興奮をあらわにした。小さな身体を抱きしめながら夢中で腰を振る。 「秀包…っ」 「虎ぁ…ッ!」 「あ…」 夢中になって性交に耽っている内に、外は暗くなりかけていた。 秀包はぐったりとしたまま動かない。縛られた右半身は恥部を余す所なく晒し、体内に吐き出した精がとろりと溢れ出していた。 「やべぇ…」 その言葉にどの程度の意味が込められていたのかは分からないが、宗茂は慌てて秀包の拘束を解いた。 「痛…っ」 突然自由を取り戻した身体はギシギシと軋み、秀包の意識を無理矢理叩き起こす。 「大丈夫か?」 「ちょっと痛い」 「…ゴメン」 とりあえず出さないと、と宗茂が秀包の肛門に指を突っ込む。 「虎…っ」 「何?」 器用とは言えない指が、精液を掻き出した後、唇を噛み締めていた秀包が漸く口を開いた。 「おれの事好きなの?」 「そりゃあ…すきだけど…」 もごもごと言い澱む宗茂に、秀包は若干の苛立ちを覚えた。しかし続く言葉に、今度は秀包が言葉を失う。 「伴天連は男同士じゃダメなんだろ?」 確かにキリスト教では男色は禁忌だ。しかしそれでも譲れないものはある。 「……虎なら…イイよ」 「秀包…」 「好きだよ、虎」 その乱暴なトコも含めて。 今度は秀包から初めての口付けを送った。それは触れるだけの可愛いものだったけれど。 「オレも、好き」 宗茂はやはり乱暴に小さな身体を掻き抱き、秀包に小さく笑われるのだった。 戻る |