光の牢獄
「んっ…ふぅ」
 今日は昼間から統虎は盛っていた。勿論今日が初めてではないが、秀包にとっては正直なところ迷惑極まりない。何せ「遠乗りに行こう」と誘われた先の森の中で突然襲われたのだから。
 最初から用意していたのか、長い腰帯で後ろ手に縛られ、反対側の端を細目の木に括られる。鬱蒼とした森の中で、暗闇の中のたった一本の松明の灯かりのように降り注ぐ太陽光が差し込む様は、さながら光の牢獄。
 自由を奪われた身で統虎の荒っぽい口付けに喘ぐ姿は酷く扇情的。
「よく似合ってるぜ、秀包」
「虎!ほ、解けよ!」
 統虎に掴み掛かろうとするが、しっかりと地に這う根を持った細木はびくともしない。もがく秀包を見下ろしながら、統虎は太めの帯を取り出した。
「お楽しみはこれからだぜ」
 一瞬怯えた色を見せた瞳を見据えるながら笑みを浮かべる。未だ暴れようとする秀包を押し倒し、馬乗りになると、帯で秀包の目を塞ぎ頭の後ろできつく縛った。
「どうだ?自分だけ真っ暗な感想は」
「と…虎…っ」
 震える声の裏に隠された恐怖は、統虎の次に取る行動に寄って快感に変わってゆく。
 一度組み伏せた秀包を立たせると、背後から抱き着き、袷と股立から手を侵入させる。秀包は何をされるのか緊張しながら神経を研ぎ澄ませていたから、統虎の熱い手が身体に触れるとビクンと震えた。
「なぁ、イイんだろ?脇腹触られただけでタたせてさ」
「―――っ!」
 褌の上から僅かに首をもたげた陰茎を握られて、声にならない悲鳴が喉を突く。
「とっ、虎…止めろよ!」
「そんなに大声出したら誰かに見付かるかもしれないぜ」
 ギュッと握らり込まれた陰茎はその手の中でなおも質量を増そうと、ピクピクと震えた。
「ひっ―――」
「秀包、感じてる」
 耳朶に唇が触れる距離で統虎が低く囁く。若干の無邪気さと大人の色香を帯びた低音は、鼓膜から脳を犯してゆく。
いつの間にか褌は袴の中で剥ぎ取られ、統虎の大きな手が秀包の体躯に見合った大きさの陰茎に直接触れた。
「やっ…ア」
 しかしその手はすぐに離れ、あろうことか袴からも出ていってしまったのだ。訝しげに思った秀包が背後にいるであろう統虎を振り向く。
「―――っあ!」
 唐突に乳首を摘まれ、喘ぎ声を上げる。散々情を交わす事に慣れた身体は、少しの刺激でも快感を示す。緩めの袴にじわりと先走りが滲む。
 反対の手は何処へ行ったのだろうか。秀包の胸に一抹の不安が過る。その時、口元を大きな手が塞いだ。
「んんっ!?」
 驚いて身をよじる秀包に、統虎が小声で囁く。
「こうしないとお前デカイ声出しちゃうだろ?ホントは声聞きたいけどしょうがないよな」
 統虎は悪びれた様子もなく座り込み、胡座をかくとその中に秀包を収める。身長差のある二人だ。何せ秀包が手を目一杯上げても統虎の頭頂部に触れる事は出来ないくらいなのだから、情交にも不便な事は多い。
 そうすると自然に秀包が統虎に跨がる格好になることが増えてくる。一度正常位でしたときは、本来ならば攻め手側の頭が受け入れる側の頭より少し下にくるはずが、統虎の喉元が秀包の口元に当たったくらいなのだ。
 そんな訳ですっぽりと統虎に抱き抱えられ、口と目を塞がれた秀包は逃げる術を失った。
 耳朶を柔らかく食まれ、身体の芯が火照る。
「ん…っ」
 乳輪を執拗に責められ、身悶える。肝心の中核には触れてこないから、満足な快感を得る事も出来ず、只不自由な身体をよじった。
「袴濡れてんじゃん、親父殿に見付かったら何て言う?」
 そう言う統虎の股間も硬くなり、その上に座っている秀包にはそれがはっきりと感じられた。褌の中で窮屈そうにしている陰茎を鎮めようともせずに、秀包の耳の穴をひたすらぴちゃぴちゃと舐める。
「んん…!ん、んぅ…」
 息が上がり、鼻だけでの呼吸が辛くなる。しかも統虎の親指が鼻のすぐ近くにある所為で酷く息苦しい。
しかしそれなのに快感はいつもよりずっと強い。秀包に被虐的趣向があれば、窒息寸前の状態で快感を得る事はあるかもしれない。或いは視覚を奪われて神経が敏感になっているせいか。
 どちらにせよ、秀包は陰茎をこれでもかと言うくらいに勃起させ、袴をどんどん湿らせてゆく。
「俺やべーよ、早くお前にイれたい」
「んー!んー!」
 こんなのは嫌だ!
 耳を舐められながら乳首を弄られ、秀包は快感と嫌悪感の狭間でどうにも出来ないでいた。
 酸素を求めて必死で呼吸をする。それに気付いた統虎は、わざと親指をずらし、秀包の鼻に近付けてきた。
 このままじゃホントに死んじゃう。
 ぼんやりしてきた頭で統虎を振り返ろうとするが、口と一緒に顎も捕われている為それすらも叶わない。
 ぐったりし始めた秀包に、さすがにまずいと思ったのか、完全に手は離さないものの指に隙間を空けて口からも酸素を取り入れられるようにしてやる。
 それでも愛撫を止めないでいると、ひゅーひゅーという呼吸音と共に、くぐもった喘ぎ声が指の隙間から漏れた。
「膝立ちになって」
 軽い酸欠のせいで平衡感覚の覚束ない秀包の脇に手を差し入れ、持ち上げる。
「む、無理…」
 よろよろと倒れそうになる秀包の腰を支え、袴をすそごと捲り上げると舌で湿らせただけの指を肛門に押し込んだ。
「ぅわ!」
「何だよ、色気ねぇなぁ」
「やめろって!まだ昼間アっ!」
「そうそう、それだよ。ちゃんと立っとけよ」
 指を一気に捩込まれるが、散々乱暴な性交を受け入れてきた秀包にはそれすらも快感だった。
「う…うぅ…あ…はっ」
 息を吐きならがら軽くいきむ。統虎の大きな陰茎を幾度となく受け入れてきた秀包は、無意識の内に少しでも楽に受け入れる術を手に入れていたのだ。
 指はあっと言う間に二本に増やされ、秀包の体内を掻き回す。濡れた音が統虎には心地良く、秀包には快感をもたらす。ぐいっと頭が引き寄せられ、耳に舌が入り込んだ。
「アん…や、ぁ」
 突然の生温い刺激に思わず嬌声を上げる。統虎は秀包が前に倒れないように支えながら、執拗に乳首を弄った。
「なぁ…目隠ししてサれるのってどんな気分?」
「ひっ…喋るな!っあ!」
 唇が耳朶を掠める度に喘ぎ声を我慢することが出来ない。
「イれるぜ?」
 袴をたくし上げ、小さく痙攣する肛門に陰茎を押し当て、そのまま秀包を支える手を離すと、自重(じじゅう)でずぶずぶと挿入されていく。
「うあ、あああ!ん、むぐぅ!」
ぺたりと座り込んでしまうと、統虎の太く大きな陰茎が奥深くまで入り込み、秀包に凄まじい圧迫感と快感を与えた。
「デカイ声出すなっつってんだろ」
 統虎は再び秀包の口を塞ぐと、腰と顎を掴んだまま小さな身体を前後に揺すった。陰茎が直腸壁をしだく度、秀包の鼻からくぐもった喘ぎが漏れる。
「ん…ふぅ…っ」
「やっぱりいつもより感じてるだろ?」
 次第に痛みと圧迫感が快感に変わり始めると、統虎は秀包の口を解放し、耳朶に唇を押し付けながら、
「声、我慢しろよ?」
 と低く囁いた。秀包が何度か頷くのを確認すると、統虎は秀包の脇に手を入れ、陰茎が抜けるギリギリまで持ち上げ、パッと手を離した。それを何度も繰り返されると、激しい刺激に秀包は意識が混濁してくる。
「じれったいな」
 秀包を立たせ、繋いだ木に凭れ掛からせると、背後から激しく突き上げる。
「んっ!んぁッ」
 思わず声を上げる秀包に構わずガンガンと突く。統虎の陰曩がペタペタと秀包の尻に当たった。しかしそんな僅かな感覚には気付かないくらいに秀包に与えられた快感は強く、激しいものだった。
「んん――っ!」
 唇を噛み締めたまま秀包が達する。まだいきり立ったままの統虎を体内に迎えたまま、ぐったりと身を任せる秀包を、統虎は力任せに突き上げた。
ぐったりと弛緩した身体でも、肛門だけはきゅうきゅうと統虎の大きな陰茎を締め付ける。だから統虎は布の裏で虚ろな目をした秀包を何度も突き刺す。
「うあっ…!」
 低い呻き声を上げ、統虎が達する。後始末の事なんて考えていないようで、秀包の体内に精を放った。身体の奥に放たれた熱い精液に、虚ろだった秀包が小さく呻く。



 目隠しを外してやり、両手を拘束していた紐を解く。縛られた両手は傷になり、赤く擦り切れていた。拘束を解かれた秀包はぱたりと倒れ、統虎に全身を預ける。
「喋れるか?」
「……ん」
 眩しいのか、半分目を閉じたまま秀包が小さく頷く。
「でも立てない…」
 弱々しく訴える秀包に、何だか申し訳ないような気持ちになる。しかし統虎は自分の性欲を抑えられないし、秀包に対する歪んだ欲求も抑えるつもりもない。秀包は秀包で、そう言った統虎の歪んだ部分を享受していた。そして自らも相当歪んだ性癖の持ち主である事に気付かされる。まさか目隠しをされていつもよりも感じただなんて。縛られるのは日常茶飯事だが、外で目隠しまでされたのは初めてだ。しかも森の中とはいえ、切り開かれた場所で、誰が来てもおかしくない。更に言うなれば近くには小川が流れていて、この時期なら水遊びをする者もあるだろう。それなのにあられもなくはしたない声を上げ、窒息寸前で統虎を強く締め上げて達してしまった。
 恥ずかしさに顔を赤くして、滲んだ涙を乱暴に拭うと、気が抜けたのか肛門から統虎の出した精液がとろりと零れた。思わず尻に力を入れるが零れてしまった分はどうしようもない。身体を傾け袴に付かないように尻の部分を引っ張ると、脱がされた褌で慌てて拭った。下半身がすーすーしたが、袴を汚してしまうよりはずっとマシだ。
「俺が処理してやるよ、四つん這いになれよ」
「腰が立たないって言ってるだろ」
 今は全身が自由になった状態で、木陰に座る統虎の腕の中にすっぽりと収まっているが、大きな陰茎で散々突かれた肛門は僅かに広がり、力を入れていないと精液が垂れ流しになってしまう。それだけは避けたいと、秀包は必死に力を入れているのに、それを嘲笑うかのように統虎は腕を縮めて秀包の尻を撫でてくる。
「腹壊してもしらねぇぜ?」
「お前がナカに出さなきゃイイだけの話だろ!」
「だから声荒げんなって」
 股立から手を突っ込むと秀包の褌を尻に当て、右手の人差指で体内に残った精液を掻き出す。その間にもぎゃんぎゃん吠える秀包の口を封じるべく、左手で顎を掴み後ろを向かせると無理矢理口付けた。
 舌を吸い上げ甘噛みしてやると、秀包は大人しくなり、統虎の袴を両手で掴み、口腔を蹂躙する統虎の舌に耐えた。
「ほら、もうイイだろ」
 にやりと笑う統虎は、自分の精液の付いた指を秀包の口元へ持って行った。おずおずと差し出された指を舐める。
「苦い」
 すっかり綺麗にしてしまうと、秀包は愚痴っぽく呟いた。しかし体内はすっかり綺麗になり、後は帰ってから湯浴みでもすれば何ともないだろう。
「そこの川で洗ってくか?」
「帰ってからでいいよ」
 尻の下から褌を抜かれくたりと統虎に身体を預けた秀包は、もう少し休みたい、と言うと、静かに目を閉じ、すやすやと寝息を立て始める。
「おーい、秀包ー?」
 統虎の無体に耐え切れなかった身体は重く、なかなか動いてはくれない。頬をぺたぺたと叩かれた秀包は重い瞼を持ち上げようとするが、やはり襲い来る睡魔には勝てずに吐息は寝息に変わってしまう。
「参ったな…」
 抱えて帰る事は簡単だが、馬は二頭。傾き始めた太陽を見ながら、統虎は溜息を吐いた。



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